小倉 肇 (2003年08月号)
外ツ国に聖勅を聞き汗淋漓 (松永栄夫)
8月15日は太平洋戦争の終戦記念日である。今年は数えて59回目ということになる。思えば戦前も遠くなったものである。
明治維新という近代化革命に奇跡的な成功を収めた日本は、日清、日露の両大戦の成果に奢り、中国大陸への侵略、国際連盟からの脱退、そして太平洋戦争へと転落の歴史を歩み、1945年8月惨澹たる状況の中でこの日を迎えた。
当時、小学校4年生であった筆者にも、ただただ暑く、そして空腹だったこの日の印象は鮮明である。
もう二度と戦争は嫌だという、生き残った人々の強烈な平和への共通意識が、その後の祖国の経済立国の歩みを支えてきた。しかし、戦争を直接体験した世代が政治、経済の指導的立場より姿を消し始めると、勇ましい、キナ臭い地鳴りのような響きが聞こえ出し、なんとなく不安が感じられるこの頃である。
冒頭の句は『奥熊野の民俗・No.7』所蔵の、「ある学徒兵の戦中句集」より採ったもので、作者の松永栄夫は北牟婁郡海山町出身、戦時中に学徒動員兵として海軍航空隊に召集され中国戦線に従軍、九死に一生を得て帰還、戦後は家業の山林経営に専念しつつ、長年にわたって町の文化協会長を務める等、地域の信望を集めている人物である。