小倉 肇 (2007年12月号)
ぼたん鍋これより紀伊の国境(まこと)
ぼたん鍋とは猪の肉を鍋で煮る料理のことである。ネギや豆腐にシイタケなどを刻んで入れ、醤油やみりんで味をつけ煮ながら食する。
猪肉には独特の臭みがあり好き嫌いがあるものの山村にあっては冬の味覚を代表する料理であった。
伊勢から紀伊にのびる国道42号線の沿線上には多気郡大台町の勢和村と境を接するあたり、さらに南下すると紀州もほど近い度会郡大紀町の滝原地区内等に牡丹鍋の看板を出している食堂があった。猪肉は牡丹、あるいは山鯨と言い替えられてきた。
奥伊勢や紀州は江戸時代から猪の多い所で山間の村々にはみごとな猪垣が築かれていた。猪を獲る猟師も多く、肉食を禁じていた江戸時代から猪だけは食する風習が伝えられてきたのである。しかし最近は猟師の数が激減したことなどから猪肉を売り物にする料理屋もほとんど姿を消してしまった。
冒頭の句の作者は本名 加島誠、1935年生まれ。三重大を卒業後、紀州・伊勢市にて教職につき、そのかたわら俳句に親しみ、同人誌「菜の花」「年輪」を舞台に活躍、真摯な性格そのままの写実に徹した正統的な作風は高い評価を受けてきた。句集には「漁火」等がある。