三月

小倉 肇 (2008年3月号)

うくひすや春の山里風けむる(樗良)

 鶯は日本の春を代表する野鳥である。
 その生息分布は日本全土におよぶ、冬まだ寒さ厳しい時期より鳴き始め、春告げ鳥とも呼ばれている。
 年が明けて、日本人が真っさきに耳にする啼き声でもあるので、その声を初音ともいう。
 薄黄色の色彩も鮮やかであり、声も清澄であることから、日本人にとって古来、もっとも親しまれ愛されてきた野鳥である。
 鶯はまた早春を代表する花、梅花ととりあわせて画題とされてきた。
 冒頭の句は江戸時代の伊勢俳壇を代表する俳人の一人、三浦樗良の句である。いかにも春の南伊勢あたりの農村風景を彷彿とさせるのびやかな句である。
 三重で鶯を詠んだ句としては越後の俳人、鈴木牧之が、1796(寛政8)年、現紀北町の熊野古道、始神峠で詠んだ「待ちかねて鶯啼くか日の出しほ」もある。
 旧暦の2月上旬、今の3月中旬であろうか、江戸時代を代表する紀行作家鈴木牧之、27才の時の句である。この年の1月8日、故郷の越後塩沢を出立した牧之は、伊勢、熊野、西国33ヶ所を巡り、京都、信州を経て塩沢に帰郷したのは4月2日、ほぼ100日にわたる大旅行の記録は「西遊記神都詣西国巡礼」という旅日記として残されている。


三重歳時記 2008年