五月 青葉山

小倉 肇 (2008年5月号)

風の道見えて涼しや青葉山(既白)

 初夏のころ全山青葉に覆われて清々しい山容を青葉山という。一志や多気、飯高、熊野などの五月の山村では青葉山の連続する風景が今も現出する。
青葉と一口にいっても単調ではない、遠近の差により濃淡入り交じり、緑、青、藍、紫それぞれの衣裳をまとう。
三重に残る初瀬街道や伊勢別街道、世界遺産に指定された熊野街道などの古街道はこの季節まさに青葉山の背を分け入って歩く道である。
冒頭の句の作者既白は加賀の出身で「蕉門昔話」「破れ笠」などの句集で知られた江戸時代中期を代表する俳人の一人である。
1760(宝暦10)年、熊野本宮に参詣しその後伊勢に出ている。その旅の途中で詠んだ句であるという。青葉山の折り重なる山中を吹き抜けていく五月の風の快さが眼前に彷彿とする佳句である。
既白は伊勢が気に入ったのか晩年は伊勢市楠部に落ち着きその地で没した。墓は同所の心證寺にあるという。


三重歳時記 2008年