七月 海虹

小倉 肇 (2008年7月号)

海の虹太し生涯無なるもよし(東正佳)

 夏期、驟雨のあとサッと晴れ渡った空に円弧を描いて大空に七彩の橋を架ける虹はまさに自然の造化の極みである。
 虹の出現は夏期と限らないが季語のうえでは夏とされている。そのほかの季節の虹を俳句に詠む場合は「春の虹」「秋の虹」「冬の虹」と表現するのが決まりであるという。確かに虹は夏期の夕方近く、雨あがりの空に架かるものが最も印象的である。
 冒頭の句は海上の天空に出現した、鮮やかで、しかもどこかはかなげな七彩の虹橋の情景を見事に表現している。
 作者の東正佳氏は終戦時から1972年にかけて県南の小学校の事務職員として勤務、その傍ら朝日新聞社の歌壇および俳壇で活躍、その作品は『文芸春秋社刊、山本健吉編、最新俳句歳時記』や『昭和万葉集』などに掲載された実力派の文人である。
 名利に恬淡として清貧を貫き、高村光太郎などの著名人からも愛された作者の人となりや生涯を彷彿とさせる佳句である。


三重歳時記 2008年